「アイデンの中でIWS事業部の売り上げ比率が50%に達していないので、50%を超えて会社の主力になりたい」と話すのはアイデンIWS事業部部長兼執行役員の小野塚秀夫である。
小野塚は金沢の大学を卒業後アイデンに入社し、2017年で36年目になる。地元ではない金沢に就職した理由は、その当時付き合っていた彼女が金沢にいたからだ。そして当時の彼女が現在の奥様である。
他社との差別化のために
小野塚は現在、IWS事業部に所属。IWSとは「アイデン・ワイアリング・ソリューション」という言葉を略して作った造語である。同業他社が多い中、よそとは違った配線方法で製造している。つまり、他社との差別化を行うためにこのような造語を作ったのだ。
会社には設計、購買、組立てなどいろいろな部門がある中で、なぜ事業部という形態を作ったのだろう。それは、今までの組織では会社全体ひとまとめでしか収支が分からなかったからである。事業部制の採用によって、どの事業部が儲かっているかなど、会社の収支を細かく見ることができるようになったのだ。
IWS事業部の立ち上げ
IWS事業部は2014年の10月に立ち上がった。製造にはいくつも同じものを作る量産部門、オーダーメイドでお客様から頼まれたものを設計から行う製造部門、板金部門といった部門がある。これらすべてをいきなり事業部にすると大変な混乱が予想されたため、まずは量産部門を事業部にした。
責任者を命じられた時「赤字になったら困るな」というのが小野塚の正直な気持ちであった。それと同時にしっかりやらなければいけないという心持ちにもなった。
まずは事業部を4つの部門に分けることから始めた。部品を手配する部門、設計部門、組み立て部門、検査部門の4つである。どの部門に何人必要なのかという人数割りすら分からず、すべてが手探りのスタートであった。
忙しい時期になるとどの部門も人手が足りなくなる。特に深刻なのは、配線・組立部門だ。そんな時は、一般社員に混ざって管理職が配線作業を手伝うことで乗り切ってきた。時には社長も肩を並べて作業することもあったという。
みんなの協力による好成績
事業部を円滑に回していくために心掛けていることがある。それは声を荒げたり、力で何とかしたりしないことだ。一丸となってやっていかなければいけないので、不満が出ている場合は真摯に話を聞いて受け止めて話し合いをする。相手が納得するような話し方で話さないと組織は回らない。力ずくでやらせようとしても無理だということをも学んだ。
IWS事業部は2016年度良い成績を残すことができた。これはみんなの協力があったからこそ成し遂げられたのだ。
「責任者だからと一番上で威張っていてはいけない。みんなの協力がなければ何もできない。チームワークが一番大事だ」と小野塚はいう。
まだまだ必要な意識改革
仕事に邁進する小野塚も「辞めたい」という思いが頭をよぎったことがある。それは、2009年(平成21年)の10月に新設された品質管理部の部長を務めていた時だ。当時は従業員の品質に関する意識が非常に低く、たびたびクレームが出ていた。部長の役目としてお客様のところに謝りに行ったり、クレームが出た原因や再発防止についての報告書を作ったりした。報告書を作る際、クレームを出した社員に原因を尋ねると、意識の低さから「覚えていない、分からない」という答えが返ってくる。客先で行われる品質会議では、クレームについて小野塚が謝罪をするのだが、クレームを出した本人は反省もせずに平気な顔をしているというギャップに苦しんだ。
意識が低かった原因として、小野塚は会社の教育不足を挙げた。だからこそ、意識を向上させるために品質管理部ができたのではないかと推測する。
品質管理部ができて5年。小野塚は、まだまだ意識改革が必要だという。不具合を出すとお客様に迷惑がかかるし、経費もかかって損害も出る上に会社も信用を失うということを地道に話して意識改革をしていくしかない。
自分が商品を購入した時、低品質だったら腹が立つ。だからこそ、作り手は不具合がある商品を出さないようにしなければならない。それを一人ひとり意識して仕事に取り組んでほしいという。
人材育成にも力を入れたい
小野塚は、執行役員として社長をサポートしていきたいと語る。社長はフレッシュで力強さがあり、新しいことにもチャレンジしている。そこを支えていきたいという。
自分の後に続く人材を育てていかなければならない年齢になったため、今後は人材育成にも力を入れていきたいと話す小野塚。
「進化するアイデンティティ――可能性は制御しない」という経営理念の通り、小野塚はこれからも、どんどん進化していくアイデンを牽引していくことだろう。